両建てとはなにか?正しく理解してヘッジを使いこなそう

このページではトレード用語として頻出する「両建て」「ヘッジ」について解説しています。

多くの方がロングとショートを同時に持つことを両建てやヘッジであると理解しているのではないでしょうか?

トレード的に理解すると
  • ロングは市場価値が上昇すると利益がでる(資産の増加)
  • ショートは市場価値が下落すると利益がでる(負債の減少)
  • 両建ては市場価値変動に影響されなくなる

もちろんその理解で正しいのですがそもそもなぜ両建てをする必要があるのか?それを理解するために基本的な部分から解説しました。

両建てを知るために!買い/売りの状態を理解する

両建てとは簡単にいうと買い(ロング)と売り(ショート)の両方を保有していることを言います。

しっかりと理解するためにまずは「買いと売りとはなにか?」これを改めて確認していきましょう。買いの状態を「買いポジション」売りの状態を「売りポジション」として解説していきます。

買いポジション(ロング)とは何か?

買いはわかりやすいですよね。証券会社で株を購入、ビットコインを取引所で購入する、これらは買いポジションになります。

トレード専門の用語に思えますが、日常生活の中でも買いポジションを持つことがあります。

例えば遺産相続で金(ゴールド)の贈与を受けたとします。重さは200gとします。(iPhoneと同じ重さです)

金の価格が5,000円/1gだった場合200gで100万円の価値があることになりますね。

資産
金の価値100万円

市場で変動する金の価値

しかし金の相場は絶えず変動しており100万円の価値を維持してくれるとは限りません。

価格が3,000円/1gになった場合は価値が60万円に減少します。

資産
金の価値60万円

 


もちろん金が上昇することもあります。

6,000円/1gまで値上がりした場合の資産は120万円になります。

資産
金の価値120万円

 

このように持っている商品や貴金属の市場価値が変動して資産に影響がある状態が「買いポジション」です。不動産なども同じ考え方ですね。

売りポジション(ショート/空売り)とは何か?

それに対して売りポジションとは何でしょうか。簡単にいうと将来的にそれを買わないといけない状態です。

どういうことか?トレードの例を出してみます。

例えば将来的にトヨタの株が下がると予想し証券会社でショート(空売り)仕掛けたとします。トレードは1クリックで行えます。

このショート取引が実現してるのは証券会社がトレーダーに株を貸しているからです。借りたものは返す、つまりこのトレーダーは将来的にトヨタ株を買って返さないといけないのです。

いわゆる将来的に「買わないといけない状態」これが売りポジションです。

小麦に対して売りポジションをもつ製菓会社の例

トレードに限った話ではなく企業活動でも売りポジションはあります。例えばお菓子を作っている製菓会社は商品を作るために小麦などの原材料を常に調達する必要があります。

これも買わないといけない状態で、売りポジションになります。


簡単な例で書いていきましょう。例えばこの製菓会社は将来1トンの小麦を調達する計画があったとします。

1トンの小麦は現在価格で100万円だったので調達のために現金100万円を用意しました。

用意した現金調達予定の小麦1トン
現金100万100万

 


しかし天災で小麦の価格が高騰し1トン100万円だった小麦が120万円に。

予期せぬ出来事ですが、生産のために小麦は必ず買わねばなりません。

用意した現金調達予定の小麦1トン
現金100万120万(値上がり)
値上げによって必要になった現金20万円

結局当初用意していた100万円から20万円追加し、合計120万円の支払いをすることになりました。

これが小麦に対して売りポジションを持っていたために市場価格の変動で損失(現金が必要になった)を被った例です。

さらに身近な生活で例えると日常生活でガソリンの価格の動きを気にしますよね。毎年ガソリン価格が上がるとニュースになります。

それは我々がガソリンに対して売りポジションの状態だからです。小麦の例と同じく、ガソリンが値上がりすることは我々の資産(現金)の減少に繋がります。

両建てポジションとは何か?

買いポジション、売りポジションの解説を前提に両建てポジションに触れていきます。

冒頭に書いたように両建ては買いと売りを同時に持つことになります。両建てポジションの最大の特徴は市場の価格変動に対して資産の変動がなくなることです。

具体的に解説していきます。

遺産相続で受け取った金を両建てする(ヘッジする)

買いポジションの説明にあった金(ゴールド)を例にして両建てにしてみましょう。

金を贈与されたもののすぐに売るのも気が引けています。かといって金の価格が暴落することも怖いので両建てポジションを構築してヘッジすることにしました。

  1. 遺産相続で200gの金を保有(買いポジション)
  2. 200gの金を借りて売却して現金100万円を受け取る(売りポジション)

DEG
2.は先物取引のショートと置き換えてもらっても大丈夫です
    資産は
    • 金現物100万円
    • 借りた200gの金を売って得た現金100万円

    合計200万円の資産

    負債は
    • 借りた200gの金(この当時のレートで100万円相当)

    合計100万円の負債

    この時の純資産はこのようになります。

    資産(金と現金)負債(借りた金の価値)
    現金100万100万
    金の価値100万-
    合計200万100万
    全体(純資産)資産合計-負債合計100万円

    ※この時の金市場は5,000円/1gとする

    資産200万円から負債の100万円を引いて全体の資産(純資産)は100万円になりました。この両建てポジションが金相場が変動した時にどうなるかみていきましょう。

    金相場が下がったケース

    金相場が下落して2,500円/gの半値になってしまう最悪の事態になったとしましょう。

    資産は
    • 金現物50万円(値下がり)
    • 借りた200gの金を売って得た現金100万円(変わらず)

    合計150万円の資産

    負債は
    • 借りた200gの金(値下がりして50万円へ)

    合計50万円の負債

    自分の持っている金の価値は半分の50万円に下落しましたが、借りた金の価値も同じように下落しました。

    資産(金と現金)負債(借りた金の価値)
    現金100万50万
    金の価値50万-
    合計150万50万
    全体(純資産)資産合計-負債合計100万円

    金相場が変動しても現金の総量は変わりません。資産合計150万円から負債50万円を引いて、全体の資産は100万円のままです。金相場の暴落から資産を守れたケースになりますね。

    金相場が上がったケース

    反対に金相場が上昇して7,500円/gになったケースです。

    資産は
    • 金現物150万円(値上がり)
    • 借りた200gの金を売って得た現金100万円(変わらず)

    合計250万円の資産

    負債は
    • 借りた200gの金(値上がりして150万円へ)

    合計50万円の負債

    自分の持っている金の価値150万円に上昇しましたが、借りた金の価値も同じように上昇しています。

    資産(金と現金)負債(借りた金の価値)
    現金100万150万
    金の価値150万-
    合計250万150万
    全体(純資産)資産合計-負債合計100万円

     

    こちらもやはり金相場が変動しても現金の総量は変わりません。このように市場の価格変動の影響を受けない状態になるのが、両建てポジションです。

    ビットコインを両建てしてヘッジする

    では両建てポジションの使い所はどのような時にあるのでしょうか?

    1. ビジネス上の原価を安定させる
    2. 価値下落へのリスクヘッジ
    3. 優待どり(株式)金利取り

    などなど、色々な用途はありますが、ここでは2.の価格下落へのリスクヘッジを例に出していきます。

    ビットコインを両建てでヘッジする

    100万円で購入したビットコインが2000万円に高騰し、あなたの資産は増加。しかし過去の経験上これからビットコイン価格は下落すると予想しています。

    売却して利益確定すればいいのですが利益額が多すぎて翌年の税金が跳ね上がる心配があります。このことからビットコインを売却せず売りポジションを持ち両建てポジションを構築しました。(ヘッジしました)


    1BTC2000万円のレートで同数量の1BTCをショートして両建てポジションを構築した結果このような形になりました。

    資産(1BTCの現物)負債
    (ショートした1BTC)
    BTC価値2,000万2000万
    現金2,000万-
    合計4.000万2,000万
    全体(純資産)資産合計-負債合計2,000万円

    ※この時のBTC市場は2000万円/1BTCとする

    DEG
    実際のビットコイン取引所や証券会社でショートしても口座の現金は増えませんが(内部処理されている)わかりやすくするために表記しています

    ビットコインが下落したケース

    予想通りビットコインが下落トレンドへ。1BTC=1500万円まで下落した場合どうなるでしょうか。

    資産(1BTCの現物)負債
    (ショートした1BTC)
    BTC価値1,500万1,500万
    現金2,000万-
    合計3,500万1,500万
    全体(純資産)資産合計-負債合計2,000万円

    このように資産は変わらず2,000万円のままです。

    両建てしていなかった場合は資産が500万円減少し1,500万円になっていました。このように価格変動のリスクから資産が守られている状態を作ることを「ヘッジ」と言います。

    DEG
    ビットコインそろそろ下がると思うから「ヘッジ」しておこう。
    下落トレンドも終わりそうだから「ヘッジ解除」しておこう。こんな風に使われたりもしますね。

    ビットコインが下落した場合を書きましたがもちろん上昇することもあります。

    その時も値上がり益もなくそのままの資産が維持されます。

    両建てポジションでヘッジするリスクは?

    では両建てにリスクはないのか?残念ながらノーリスクではありません。

    ここまでの例で売りポジションを持つために金やBTCを借りて市場で売りました。この「借りて売った」の部分にコストが発生しています。

    証券会社やあなたに株や金、BTCを貸す利子を設定することで収益をあげています。売りポジションを持ち続ける限りこの利子は発生し続けます。

    ですのでコストが発生する以上、両建てを気軽に仕掛けるわけには行きません。

    両建てポジションを作る理由は?

    1. 市場価格の下落から資産を守りたい
    2. 利子を上回るメリットが両建てポジションにある

    1.はヘッジのメイン用途でしょう。
    2.の利子を上回るメリットは株式でいう優待獲得などがそれに当たります。

    また株を保有していると配当を受け取れます。両建てコスト<配当額であれば、実質ノーリスクで稼げることになります。

    実はビットコインを始めとする仮想通貨の業界ではこういった両建てポジションの恩恵が多く用意されています。

    その辺りはまた別の記事にて紹介をしていきます。

    まとめ

    両建てポジションを理解するために、買いポジション売りポジションなど詳細に解説してきました。

    トレーダー的には以下のような理解が多いと思います。

    トレード的な捉え方
    • ロングは市場価値が上昇すると利益がでる(資産の増加)
    • ショートは市場価値が下落すると利益がでる(負債の減少)

    市場参加者をクリアにイメージする

    しかしながら売りポジションの解説であげたように企業活動にも両建ての概念があります。

    例えばビットコイン取引所は価格変動の激しいBTCを常に在庫として持たねばなりません。(出金要請に対応するため)

    彼らの在庫のBTCは当然市場の影響を受けます。

    最悪の場合BTC価格にビジネスが左右され倒産を招く可能性があります。よって企業はBTCをヘッジする必要があるのです。

    つまりこのヘッジはビットコイン市場全体の売り圧力になる・・・と市場に流れている注文の背景を想像できます。

    このように市場に参加しているのが誰か?というのをクリアにイメージできるようになるために詳細な解説をさせてもらいました。

    両建てやヘッジへの理解が深まれば幸いです。今回の内容は以下の書籍で学んだことを例に書きました。

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